ストリーマ研究所 空気のマメ知識 ペットアレルギーの対策は
空気中のアレルゲン対策が重要だった!
写真提供:Valerii Honcharuk / PIXTA(ピクスタ)
一般的な家庭でもっとも多く飼われているペットといえば猫と犬。その一方、現在は世界人口の1~2割が猫あるいは犬のアレルギー疾患があるといわれています。ペットアレルギーは、今は症状がなくてもペットの飼育をきっかけにして発症する可能性があるもの。そこで、ここでは猫や犬のアレルギーリスクを減らすため、われわれにできる対策について解説します。
そもそもペットアレルギーはなぜ起こる?
人間の身体にはアレルギーの原因となる物質が侵入すると、その物質に対抗する免疫反応という仕組みがあります。通常、この免疫反応は、アレルギーの原因となる物質から我々の身体を守ってくれますが、ときには過剰に反応してくしゃみやジンマシンといった負の反応を引き起こすことも。アレルギーとは、この「免疫反応が悪い方向に働く」症状のひとつです。
ちなみに、アレルギーを引き起こす物質は「アレルゲン(抗原)」、抗原に対抗する物質は「抗体」と呼ばれます。猫アレルギーの人は身体に「猫のアレルゲンによる抗体」、犬アレルギーの人は「犬のアレルゲンによる抗体」を持ち、これらが過剰に反応してしまうのです。
この説明でわかるように、ペットと暮らしていても、そもそもアレルゲンを身体に取り込まなければアレルギーにはなりません。また、アレルギーを発症してしまった場合も、原因となる特定のアレルゲンを避けることで症状を軽減することが可能です。つまり、ペットアレルギーの対策には犬なら犬の、猫なら猫のアレルゲンをコントロールすることが重要なのです。
犬や猫のアレルギー対策でできること
ペットのアレルゲンは、じつは毛じゃないって知っていた?
ところで、犬や猫のペットアレルギーでよくある誤解に「ペットの抜け毛がアレルゲンになる」というものがあります。実際にペットと一緒に生活する室内で気になることを聞いたところ、「ペットの毛」が1位(67.7%)というアンケート結果も出ています。もちろん、空中を浮遊するペットの抜け毛を吸い込めばアレルギーを発症する可能性はあります。しかし、これは毛そのものがアレルギーの原因なのではなく、毛に付着したペットの唾液などに含まれる微細なアレルゲンが症状を引き起こしているのです。
現在、犬と猫のアレルゲンは複数報告されていますが、なかでもアレルギーを起こす主要なアレルゲンとして、猫の「Fel d1」と犬の「Can f1」が知られています。そして、これらのアレルゲンが多く存在するのが唾液や皮脂腺やフケ。猫や犬が毛を舐めたりすることで、アレルゲンが毛に移り、その毛がアレルギーの原因となるのです。
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ここで重要なのがアレルゲンを含む粒子の大きさです。じつはこれらのアレルゲンを含む粒子は5μm以下のサイズが多いといわれています。花粉アレルギーの原因となるスギ花粉の大きさが30μmほどといわれているので、それよりもかなり小さいのがわかりますね。このように猫や犬のアレルゲンはとても小さくて軽いため目に見えません。そのうえ、唾液などが乾燥して空中に飛ばされると長く空中に漂い続けるという問題があります。つまり、ペットアレルギーの対策は「アレルゲンをペットから飛散させない」「飛散したアレルゲンは可能なかぎり素早く取り除く」という両方からの対策が重要なのです。
対策定番のシャンプーやブラッシングには限界がある
アレルゲンをペットから飛散させない方法として、よくいわれるのがペットの頻繁なブラッシングや入浴です。ブラッシングで不用意に抜ける毛を減らし、入浴で毛に付着したアレルゲンを落とすのが目的になります。ただし、 実際に犬を洗浄して一週間Can f1を計測した実験では、洗浄の効果は1週間続かなかったという結果もありました。頻繁過ぎる入浴はペットのストレスにもなりかねないため、ペットのケアだけでアレルゲンの飛散を抑えるのは難しいかもしれません。
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飛散してしまったアレルゲンに対しては、こまめな掃除で床や家具、壁などに付着したアレルゲンを取り除く必要があります。そして、重要なのが空気中のアレルゲンの除去。じつは、猫や犬を飼っている家庭で行った実験では、空気中に浮遊するペットのアレルギーはダニのアレルゲンより100倍近く多いという結果もあるのです。このため、空気中のアレルゲンをしっかり捕集できる空気清浄機の導入も重要です。
ペットアレルギー対策では空気清浄機の性能が重要に
現在さまざまな空気清浄機がありますが、ペットアレルギーの対策に導入するならチェックしておきたいポイントが複数あります。
ひとつめがフィルター性能。高性能な空気清浄機の多くは、目の細かなフィルターで空気中のゴミをろ過する方式を採用しています。前述したように猫や犬のアレルゲンは目に見えないくらい小さいため、フィルターには「HEPAフィルター」性能以上のものを選ぶと安心です。
次に、重視したいのが空気清浄機の「適用畳数(適用床面積)」です。これは、「その空気清浄機が30分で綺麗にできる空間の広さ」の目安のこと。たとえば、適用畳数6畳の空気清浄機で6畳の部屋の空気をきれいにするには30分かかりますが、適用畳数28畳の空気清浄機なら8分できれいにできます。空気中に浮遊するアレルゲンを素早く除去できれば、そのぶん人がアレルゲンを吸い込むリスクを減らすことができるうえ、アレルゲンが家具やカーテンなどに付着する前に捕集できるというメリットもあります。
最後に、意外と見逃しがちなのがフィルターの安全性です。空気清浄機は高性能なほどアレルゲンをはじめとした多くの有害物質がフィルターに付着するため、フィルター交換時などではアレルゲンをはじめとした有害物質に曝露するリスクもあります。このため、ダイキン工業では強力な分解素が有害たんぱく質を分解し、アレルゲンを不活化させるストリーマ技術を研究してきました。ストリーマ技術を使った試験では、ストリーマを照射したネコのアレルゲンFel d1は99.9%以上、イヌのアレルゲンCan f1は99.9%以上不活化したことを確認しています。
大切な家族のためにアレルギーになる前から対策
日本における猫と犬の飼育頭数は1800万頭を超え、いまや15歳未満の子供の人口よりも多いといわれています。そして、ペットを飼育する世帯が増えることで増加しているのがペットアレルギーです。ペットアレルギーはいま現在症状がなくても、アレルゲンに接触し続けることであとから発症するリスクもあります。このため今症状がない人も早めに対策することが重要。大切な家族がアレルギー症状で苦しまないため、そして家族の一員であるペットを手放すリスクを負わないためにも、ぜひペットのアレルギー対策について考えてみてほしいと思います。